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よくある疾患

乳腺症

乳腺症とは

乳腺症では乳房に痛みが起こったり、しこりをふれたり、分泌物が出たりと様々な症状を呈します。また無症状の方で乳腺エコー(超音波検査)を受けてはじめて指摘されることも多くあります。医学的には「非腫瘍性・非炎症性の増殖性病変」と表現され、基本的に悪性化することはありません。30~40代の女性によく見られ、女性ホルモンの量が変化することで発症すると言われています。
生理の前には痛みがひどくなりますが、そのほとんどは生理が終わると治まります。痛みが強くない場合は、治療を受けなくても問題ありません。
気になる症状が乳腺症によるものか否かは、各画像検査、場合によっては針生検が必要になる場合もありますので、気になる場合はご相談ください。

乳腺症が起こる原因

乳腺症が起こる原因女性は40代~50代になると、ホルモンバランスが大きく乱れて閉経を迎えます。この時に、乳腺症になるケースが多いです。閉経を迎えた60代以降になると激減するので、女性ホルモンであるエストロゲンの過剰分泌などが関与しているのではないかと考えられています。

乳腺症から乳がんになることはあるのか?

乳腺症があるからといって、がん化することはほとんどありません
ただし、乳腺症では乳房にしこりができるため、乳がんを発症していても「乳腺症のしこりかな?」と勘違いされて放置されてしまうこともあります。「乳腺症だから大丈夫」と油断できないのです。
また乳腺エコー(超音波検査)画像で乳腺症と初期の乳がんとの区別は非常に難しいこともあります。可能性が高い場合は生検検査を行いますが、低い場合は経過観察を行い、変化が強くなった時点で生検検査を追加する場合もあります。

乳腺症の治療期間・治療方法

乳腺症は、良性の乳腺疾患です。痛みやしこりなどは一時的で、基本的には強く現れません。経過観察が行われることが多いので、定期的に検査を受けに受診していただきます。
ただし、症状がずっと続いたり日常生活に影響を及ぼしたりしている場合は、鎮痛薬や漢方薬などで治療することがあります。
完全に閉経すると、ホルモンの分泌量が少なくなるため、今までの症状やしこりなども消失していきます。

乳腺症の多くはがん化しませんが放置も禁物です

乳房に痛みやしこりがあると、「乳がんかも……」と心配する方も多いのではないでしょうか。実際検査してみると乳腺症や良性腫瘍であることが多いですが、症状が出た際はすぐに医師へ相談しましょう。乳腺症だった場合でも、きちんと診断を受けて治療を始めると、悩んできた症状が落ち着くこともあります。

乳腺炎

乳腺炎とは

乳房は、母乳を作り乳頭まで運ぶ「乳腺」という器官を脂肪が包み込んだ組織です。この乳腺が炎症を起こすのが乳腺炎です。乳腺炎は、授乳している方の2〜10%にみられます。

乳腺炎の症状

など
乳房に起こる疾患ですが、発熱や寒気など、風邪と似た症状が起こることもあります。乳房以外の症状にも気を付けましょう。

乳腺炎の原因

乳腺に母乳が溜まると、炎症が起こって急性うっ滞性乳腺炎になります。炎症に加えて細菌感染を起こすと、急性化膿性乳腺炎が引き起こされます。

急性うっ滞性乳腺炎(急性停滞性乳腺炎)

乳房に母乳が溜まると、乳腺に炎症が起こります。これを「急性うっ滞性乳腺炎」と呼びます。乳腺で作られた母乳が、適切に乳頭から排出できず内部に溜まってしまいパンパンになってしまうことで発症します。主な解決法は搾乳です。溜まった母乳を乳頭から排出することで内部の圧力が下がると症状は改善します。どうしても、搾乳で改善しない場合は切開をすることもありますが、授乳中に切開を行うと傷がふさがりにくいため、最終手段です。

授乳する間隔が不規則

授乳の間隔が不規則でいると、母乳の作られる量と赤ちゃんの飲む量が合わなくなります。そうすると、ちょっとした拍子に乳管につまりが生じ乳腺に炎症が起こりやすくなります。

赤ちゃんが母乳を飲む量と作られる母乳の量に差がある

赤ちゃんの飲む力または飲む量が足りないと、乳房内に母乳が残ってしまいます。授乳後も乳房が張る場合は適宜搾乳をするなどして、乳管につまりが生じないようにしましょう。

乳管の形状

乳管が十分に広がらなかった結果、母乳が出づらくなることで乳腺炎になるケースもあります。

乳房が押さえつけられている

ブラジャーが小さいと胸が圧迫され、乳腺炎が起こりやすくなります。また、前屈みなどのように、胸を圧迫し続ける動きも原因になります。

急性化膿性乳腺炎

急性うっ滞性乳腺炎を引き起こして、母乳が溜まったまま半日~1日以上経過すると、母乳に細菌が感染して化膿を起こします。その状態を「急性化膿性乳腺炎」と言います。
急性化膿性乳腺炎は、インフルエンザに罹った時のように筋肉痛や高熱が出ることもあります。治療は、抗生剤を用いた薬物療法や外科的処置(切開・排膿など)が行われます。授乳を続けるためにも、症状があった際は速やかに医師へ相談し、ケアをしてください。

乳腺炎の対処法

できるだけ赤ちゃんに母乳を飲んでもらうことがベストの対処法です。

赤ちゃんに母乳をよくあげて、溜まらないようにしましょう。乳房に母乳が溜まると、痛みがひどくなります。痛みがひどくなった場合は専門医へ相談し、適切な治療を受けてください。処方される薬は、授乳中に飲んでも大丈夫なものですので、安心して服用してください。また、母乳マッサージも、乳腺の詰まりを改善させるのにお勧めできます。

薬物療法

乳腺炎は、胸が痛むのを特徴としていますが、発熱などの全身症状が出ることもあります。これらは炎症によって起こるので、緩和させるには薬の服用が必要です。
当院では、授乳中でも安心して飲める薬をお出しします。授乳中の方はぜひ、医師へ相談してください。また、状況に応じて母乳を止める薬を処方することも可能です。ご希望の際はお気軽にお申し出ください。

乳腺のう胞

乳腺のう胞とは

乳管の一部が袋状になり、そこに液体が溜まった状態です。中にはリンパ液などの水分が入っているので、触るとしこりのように感じることもあります。また、のう胞が大きくなることで、乳房が張りとして自覚することもあります。

乳腺のう胞の症状

乳腺のう胞は乳腺症と似ており、乳房にしこりや圧迫痛が出ることがあります。しかし、自覚症状に乏しいケースがほとんどで、悪性ではないので軽度の場合は治療を行わなくても問題ありません

乳腺のう胞の診断と治療

マンモグラフィでは円形の腫瘤として描出され他の腫瘤との鑑別がつかないこともあります。
乳腺エコー(超音波検査)でほとんどの場合は診断がつきますが、診断が下せない場合は、生検検査を行います。
乳腺のう胞として診断がつけば基本的には放置して問題ありませんが、痛みが強い場合やしこりが気になる方は中の液体を吸い取る事も可能です。

乳管内乳頭症

乳管内乳頭腫とは

乳管内乳頭腫は、乳管の中にできる良性腫瘍です。30代後半~50代の女性に多く見られ、乳頭からの分泌物やしこりを感じることを機に発見されます。乳管内乳頭腫自体は良性疾患ですが、乳腺エコーの画像上、非浸潤性乳管がんと見分けがつきにくいため、大きさや形状次第では、針生検や切除生検が必要になる可能性もあります。

乳管内乳頭腫の症状

乳管内乳頭腫のしこりは、乳頭の近くにできることが多く、触ることで確認できます。ただし、乳頭から遠い箇所にできたしこりは、触っても分からないこともあります。しこりは両方の乳房にできることもあり、乳頭から分泌物(透明または薄黄色、赤色、褐色など)が出ることもあります。
乳頭からの分泌物は、乳がんのサインにもなりますので、気になる症状がありましたら早めに医師へ相談してください。

乳管内乳頭腫の原因

乳管内乳頭腫は、乳管の上皮細胞が増えることで発症します。30代後半~50代の女性に多く、稀に乳がんと一緒に発症することもあります。
しかし、乳管内乳頭腫が起こる原因は未だに解明されていません。女性ホルモンが影響しているのではないかと言われています。

乳管内乳頭腫の検査方法、診断をつけるには

診断には、マンモグラフィ検査や乳房超音波検査が必要です。造影MRI検査が行われることもあります(なお、MRI検査が必要な場合は、専門の医療機関へご紹介いたします)。
病変が小さいと、先述した検査を行っても診断がつかない可能性もあります。その場合は切除を行ってから、良性か悪性かを調べます。

また乳管内乳頭腫の場合は、しこりがなくても、乳頭から分泌物が出るという症状しか現れないケースもあります。その際は、細胞を採って顕微鏡で調べる細胞診を行います。

乳管内乳頭腫の治療

乳管内乳頭腫と診断がつけば基本的には治療は不要です。ただし、前述のとおり、一部に乳がんが混じっていたり、画像検査のみでは非浸潤性乳管がんと区別がつかないこともあるため、定期的な経過観察が推奨されます。

乳腺線維腺腫

乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)とは

乳腺線維腺腫は、乳房の上皮成分・間質成分の増殖によってできる良性腫瘍です。上皮性や間質結合織性の混合腫瘍であり、20~30歳代の女性によく見られます。自覚症状のほか、乳腺エコー(超音波検査)で見つかることが多い疾患です。
線維腺腫自体は悪性化することもなく、基本的には経過観察でよいとされていますが、稀に急速に増大するものや、切除が必要な葉状腫瘍とよく似ているため判別がつかないことがあり、定期的な経過観察が推奨されます。

乳腺線維腺腫の症状

しこりができる

1~3㎝くらいの平たいしこりが乳房にできます。触ってみると、コロコロと動くのが分かります。乳腺症とは違い、痛みは伴いません。

乳腺線維腺腫の原因

20~30歳代の女性に起こりやすいことから、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンなどのバランスが関係しているのではないかと考えられています。しかし、ハッキリとした原因は未だに解明されていません。

乳腺線維腺腫の検査方法、診断をつけるには

乳がんと見分けるためにも、視触診やマンモグラフィ検査、乳腺エコー(超音波検査)などを受けていただきます。これらの検査を行っても良性・悪性の区別ができなかった場合は、細胞診・組織診を行います。

乳腺線維腺腫の治療

検査で乳がんではないことが分かり、良性腫瘍だと診断されましたら、治療は必要ありません。ただし、半年または1年に1回の頻度で受診していただき、腫瘤に変化がないかをチェックする必要はあります。
乳腺線維腺腫は、年をとると自然に消えることが多く、しこりがなくなることもあります。ただし、しこりが急激に大きくなったり見た目に問題があったり、3㎝以上になって葉状腫瘍の可能性があったりした場合は、手術を選択します。

葉状腫瘍

葉状腫瘍とは

葉状腫瘍は、2~3か月単位で早く大きくなる良性の腫瘍です。乳腺組織を構成する上皮(乳管細胞)と間質細胞(線維芽細胞など)のうち、間質細胞という種類の細胞が増えることで発症します。また、病理組織検査では、良性腫瘍なのですが、さらに良性・境界病変・悪性の3種類に分けられます。
治療は、外科的切除が一般的です。腫瘍全体の病理結果で悪性だった場合は20%の確率で転移を起こすので、切除後でも定期的に検査を受ける必要はあります。

葉状腫瘍の症状

無症状で検診等で見つかることも多いですが、乳房にしこりができるので、目視や触診で発見されることもあります。

葉状腫瘍の原因

乳腺の腺管上皮にできる乳がんに対して、葉状腫瘍は、間質細胞が腫瘍化することで発症します。そのため「肉腫」として分類されます。
葉状腫瘍は発症原因だけでなく、発症リスクを高める要因や、遺伝するリスクの有無まで未だに分かっていません。「線維腺腫からできる」とも考えられていますが、この説も定かではありません。

葉状腫瘍の検査方法、診断をつけるには

診断するには、マンモグラフィ検査や乳腺エコー(超音波検査)が必要です。しかし画像検査では線維腺腫との区別が難しいことも少なくなく、葉状腫瘍が疑われる場合は生検検査を行います。

葉状腫瘍の治療

手術による切除が選択されます。再発率が高く、悪性になるリスクもあるので、基本的には病変部分の完全切除が不可欠になります。良性では基本的には腫瘤のみを切除する術式を行いますが、腫瘍が非常に大きい場合は全切除術を行う場合もあります。