遺伝性乳がんとは
遺伝性乳がんは、特定の遺伝子の病的変異が原因として発症する乳がんです。なお家族性乳がんは遺伝だけでなく、がんのリスクを高める習慣や環境を過ごすことで引き起こすケースもあるため、遺伝性乳がんに当てはまらない可能性もあります。また、遺伝性乳がんの患者様の中には、血縁者の中に乳がん患者がいない方もいらっしゃいます。
遺伝性乳がんの70~90%は、BRCA1とBRCA2というDNAを修復するがん抑制遺伝子のうちの両方、もしくはどちらかに病的な変異があることで起こります。これらに異常が生じることでがん化が抑制できなくなり、乳がんや卵巣がんの発症リスクが高まります。実際に乳がんの5%~10%は、このような遺伝性乳がんだと報告されています。
遺伝子は両親からもらうので、両親のどちらかがBRCA1とBRCA2の変異を持っていると、子どもは2分の1の確率でその影響を受けます。男性の乳がんはたったの6%と極めて珍しいのですが、BRCA1もしくはBRCA2の変異を持っている可能性もあります。その場合も、子どもは2分の1の確率で変異を受け継ぎます。
遺伝子の変異があっても、必ず乳がんや卵巣がんになるわけではありません。とはいえ海外の調査によりますと、50歳までに乳がんにかかる方は2%と報告されているのに対して、BRCA1とBRCA2に変異がある方は同じ50歳までで、33~50%にもなると言われています。加えて80歳までの発症率は、BRCA1の病的変異陽性者で72%、BRCA2の病的変異陽性者で69%にもなります。40歳以下で乳がんになるケースも多く、治療しても新たな乳がんができる方も少なくありません。
卵巣がんになるリスクも、BRCA1の変異がある方は35〜46%、BRCA2の変異がある方は13〜23%と比較的高くなります。
BRCA1とBRCA2の変異は血液検査で調べられます
BRCA1とBRCA2に病的な変異がないかを調べるには、血液検査が必要です。日本では2020年4月から、この遺伝子を調べる血液検査が一定の条件を満たせば保険適用されるようになりました(BRACAnalysis®)。この検査で遺伝性乳がんのリスクの高さを調べ、予防として乳房・卵巣を切除することも可能です。このような対策を積極的にとるためには、カウンセリングなどのサポートをはじめ、差別や不当な扱いを受けないための法整備が不可欠です。
日本で行われる乳がん予防
日本では、血縁者の中に「乳がんにかかったことのある方」がいる場合、発症リスクに考慮しながら乳がん検診を定期的に受けたり、セルフチェック・生活習慣の改善を行ったりすることが多くなっています。
BRACAnalysis®診断システムとは
BRACAnalysis®診断システムは、患者様の生殖細胞系列BRCA1・BRCA2遺伝子について調べるコンパニオン診断システムです。バリアント(DNA配列変化)を「病的変異」「病的変異の疑い」「臨床的意義不明のバリアント」「遺伝子多型の可能性」「遺伝子多型」の5タイプに分けていきます。
検査結果をもとに、各治療の適応の有無を検討することになります。詳しくは下記リンク先をご確認ください。